おはようございます。
む〜です。
昨日は月組エリザベート見納めでした。
2回観劇して、ようやく自分の意見をまとめられたので今日からレポを再開したいと思います。
本日は知的なアナーキスト、ルイジ・ルキーニを演じた月城かなとさんについて書きます。
無闇に狂わないルキーニ
月城ルキーニのファーストインプレッションは「賢さ」でした。
プロローグでの裁判官とのやりとり、歴代で一番素早く答えていました。
早い、、というかもはや「食い気味」。
今までルキーニを演じてきた人の多くはこの場面を「だるそう」だったり「嘲るように」演じてきました。
月城ルキーニはだるいがゆえに「素早く」答える。
まるでこの押し問答が何度も、何度も、何度も、何度も、繰り返されてきたかのように。
彼はただ求められたことに毎回同じように答えてきている。
この場面をこんな風に捉えるのは初めてでした。
同時に彼に対してある種の「賢さ」を感じました。
彼は無闇に狂わない。
彼は無闇に怒ったり笑ったりしない。
「ミルク」の場面までは完全に「何を考えているのかわからないルキーニ」でした。
しかしぼーっとしているとは一切感じない。
何かを考えながら登場人物たちを俯瞰し、観察している。
彼の目には悲しみも怒りも喜びもなく、ミルクの場面まで”何か”を考えているのです。
その考えていた”何か”は「ミルク」の場面で月城ルキーニ自らが観客に伝えます。
ルキーニがエリザベートを殺した理由
「プロローグ」と「レマン湖の辺り」の場面では殺した理由を「グランド・アモーレのために殺した」と供述しますが、今回の月城ルキーニではその答えでは納得できませんでした。というか月城ルキーニの役作り上、その理由だけではあまりにも答えが薄すぎる気がしたのです。
彼女の作り上げたルキーニは他人のロマンティックのために人を殺すようなことをしないように感じたからです。
本当の理由(と私が勝手に考えている)はミルクの場面の中で語られています。
今まで声を荒げたことがなかった月城ルキーニが初めて声を荒げる時、それは「ミルク」の場面。
歴代のルキーニの中で一番”ミルクの在庫がないことにキレている”ルキーニでした笑
この時初めて彼女の怒声を聞きました。
実在の人物であったルイジ・ルキーニは「貧しく不幸な育ち故に、仕事もせずに国民の血税で豪奢に暮らす、権力者である王侯を激しく憎悪」していたと聞きます。
ミルクの場面での鋭い眼差し。
怒りをぶつけるような「在庫がないんだ!」の一言。
歌唱部分での声の鋭さ。
これら全てから実在の人物のバックグラウンドをしっかり踏まえた上での役作りだったのだと納得できました。
そして歴代ルキーニの中で初めて、リアルな「ルイジ・ルキーニの殺人動機」が解明されたように思えました。
”ルキーニの回想”の域から脱さない
「エリザベート」という作品の中でルキーニがストーリーテラー的役割を果たしているのは皆さんもご存知の通りだと思います。
そしてプロローグの尋問の場面でもわかるように、エリザベートの人生物語はルキーニの回想として語られます。その中でたまにルキーニ自身が誰かを演じてみたり、あたかも自分が人々を操っているように回想の中に溶け込んでいきます。
そんな中で月城ルキーニには掟があるようです。
それは決して回想の域から脱さないこと。
彼は一貫して狂気のルキーニではなく冷静なアナーキストです。
あくまで回想ということを念頭に置いているため、余計に動き回らない。
余計に狂いまくらない。うるさくしない。だから物語の流れも非常にわかりやすいのです。
狂いすぎて物語の流れに影響を及ぼしてしまうタイプのルキーニも歴代の中にはいましたが、私は今回の月城ルキーニが一番好きかもしれません。
エリザベートの生涯をトレースするという本来の目的からずれないのは、物語の本質を見極めやすくすることにも繋がります。
今後再演する際には是非!月城ルキーニの”掟”を引き継いで欲しいです。
”黙らせるルキーニ”とは
月城ルキーニは一貫して”黙らせるルキーニ”でした。
冷静だからこそ、彼の沈黙が余計に怖かった。ゆえに 黙る。
不必要な狂気を削ぎ落としたからこそ生まれた説得感。そう、黙るしかない。
非の打ち所のない美しさと薄汚さのハーモニー(褒めてます)。うん。黙るしかない。
そう、全てに置いて月城ルキーニは黙らせるルキーニだったと私は言いたい。
まるで月城ルキーニから完璧なアンサーを突きつけられて、口許に人差し指を当てられたような気分。
もっとはっきり言おう。
歴代ルキーニの中で月城かなと演じるルキーニが一番説得力があった。
エリザベートのその他感想
今まで書いたエリザベート関連のレポはここにまとめます。
よかったらご覧ください。
明日は海乃美月ちゃんについて書きます。
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